昆虫は「助け合い」をする生き物です。そう言われてもピンとくる方は少ないかもしれません。
自然界においてさまざまな共生がありますが、蟻の助け合いは少々毛色が異なります。
蟻はなんと、傷ついた仲間を巣まで運んで帰るのです。
なんとなく、昆虫はたくさんいるから怪我した昆虫は見捨てられてしまうと思っていませんか?
蟻の生態はまだまだ興味深いことばかりです。
どうして「助け合い」をするのか?思いやりばかりではない、その事情に迫ってみます。
蟻は仲間を巣まで運ぶ!その理由とは?
怪我をした仲間をそのまま放置せず、自分たちの巣へと運ぶ蟻が存在します。
こういった特徴をもつのがマタベレアリです。主にサハラ砂漠より南に生息するこの蟻は、他の蟻とは少々異なった習性があります。
さて、助けた仲間を運ぶというと互いに支え合って生きている、そんな印象を抱きます。
しかし実際はそういった感情的な理由ではないようです。
マタベレアリについて
マタベレアリはシロアリを捕食する蟻で、餌を得るためによくシロアリの巣へと突撃します。
当然シロアリも反撃をしますから、互いに無傷というわけにはいきません。負傷するマタベレアリも出てきてしまいます。
その際、マタベレアリは餌となるシロアリと一緒に負傷したマタベレアリも連れ帰りますが、それは「戦死者を減らすため」と研究チームは発表しています。
マタベレアリは身体の一部を喪失した場合、再生するといった機能が備わっているわけではありません。
しかし救助されることで巣の中で休養し、次の「戦い」に復帰できるマタベレアリは圧倒的に多いのです。
休養し、復帰するマタベレアリは救助されたうちなんと約95パーセント。仲間を休ませることで次の戦いに参加できるというメリットをふまえ、マタベレアリは効率的な理由で仲間を助けているのです。
まとめ
負傷者がいれば救出し治療する、というのは人間界においては常識です。
しかし自然界には特効薬があることが少ないですし、治療をするという発想は稀有といえるでしょう。
そんななかマタベレアリは、自分たちを使い捨ての兵士にするのではなく、私たちと同様にしっかり休息をとり、傷を癒すことで何度も立ち上がることができるのです。
近代的なシステムをシロアリとの戦いで獲得したのでしょうか、これも環境に適応して進化のひとつといえるでしょう。