みなさんは、アリ達がどうやってあんなにたくさん増えていくのか、ご存知ですか?
実は、アリ達は繁殖期になると、「結婚飛行」と呼ばれる少し特殊な行動に出るんです。字面からして想像がつくかもしれませんが、アリは空を飛びながら交尾します。考えてみるとすごいイメージ像が浮かんでしまいますね。
そんな「結婚飛行」、実はアリ達にとってものすごく大切なイベントなんです。
一年に一度の結婚式!アリの結婚飛行の時期とは
アリは、ハチと同じように、1つの巣に対して1匹の女王アリだけが君臨します。他のアリは繁殖能力を持たず、女王アリだけが働きアリ達を生むことができるんです。でも、そんな女王アリだって、だいたいの寿命は10年ほどだと言われていますから、人間ほど長生きできるわけではありません。必ず、次の新しい女王アリを生む必要があります。
そこで、繁殖期の前になると、女王アリはまた新たな女王アリを生み出します。たっぷりな栄養を与えられて大事に大事に育てられる、新たな女王アリ。
そしてそれとはべつに、羽のある特殊なオスアリも生み出します。普通、よく見かける働きアリらしきアリには、羽なんか付いてませんよね?
そうして生み出された新女王アリと羽のあるオスアリは、いざ繁殖期である夏から秋のシーズンを迎えると、いっせいに巣から飛び立っていきます。そうして飛び立った先で、空を飛びながら、交尾をします。この時、他の巣から同じように飛び出してきたオスアリが混じって大団体になることもありますが、それはむしろアリにとってラッキーなことであるといえます。
空中を飛び回りながら、女王アリはいろんなオス達と交尾します。そしていろんなオスから、そのオスが持っている一生分の精子をもらいます。そして十分なくらいにオス達との交尾を済ませたあと、女王アリは地上に降り立ち、自ら羽を落とします。羽は、結婚飛行のためだけに使われるものなんですね。
そのあと、羽を落とした女王アリは地面に巣穴を作ったり、木の皮にある小さな隙間に潜り込んだりして、産卵にうつります。そこからたった1匹で新たなコロニーを生成していくわけです。肝っ玉母ちゃんなんてレベルじゃありません。
たった1匹だけで巣を作れるの?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、結婚飛行の際、女王アリは貯精嚢と呼ばれる部位にたくさんの精子を蓄えたため、1匹だけで子供を生むことができるんです。女王アリから生まれた女王アリは、また別のコロニーを1匹から作り上げて、そこに君臨する新たな女王様となるわけですね。
まとめ
アリの繁殖期は基本的に1、2ヶ月程度ですが、アリの種類によって繁殖期が始まる時期にはずいぶん差があります。夏にアリの結婚飛行を見たのに、秋の終わりにもまた見かけた!という方は、違うアリ達の結婚飛行をそれぞれ目撃したことになるんです。
ちなみに、結婚飛行が終わったあと、オスアリのほうは残念ながらそのまま亡くなわれてしまいます。結婚飛行の際に文字通り精魂尽き果ててしまうので、もうそれから生きていくだけの余力がないのです。羽のあるオスアリは、このためだけに生み出されます。そう考えると、少しかわいそうになってきますね。
アリ達にとっての一大イベント、結婚飛行。もし見かけた時は、邪魔せずそっと離れるか、遠くのほうから観察してみるのもいいかもしれません。